結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

 モジモジしながら遠慮気味にそう言うと、殿下は一瞬パチッと目を丸くしたあとに「ははっ」と吹き出した。


「ああ。そうだね。何度も伝えてきた通りの理想の相手だ。この人に決めよう」

「……本当にいいのですか? 後悔はしませんか?」

「するわけないだろ。俺が何年この女性を妃に望んでいたと思ってるんだよ」

「! そ、そうですか」

「ああ。よろしく頼むよ。セアラ」

「……はい」


 好きとは言われていたけれど、結婚まで考えた上で言ってくれているかは自信がなかった。
 この国の王太子という立場上、好きという気持ちだけではどうにもできないこともあると思っていたから。
 でも……。



 こんなにもハッキリ言ってくれるなんて、嬉しい……けど、それならなんでさっき……。



 殿下の気持ちに感謝しつつ、どうしても気になることがある。
 

「あの。先ほど、私が望むならルイア王国に行ってもいいとおっしゃいましたよね? もし私が行くと言っていたら、本当に許してくださったのですか?」

「俺は一言も『行っていい』なんて言ってないけど」

「え? ですが、私が『行っていいんですか?』って聞いたら『お前が行きたいなら』って……」

「うん。『お前が行きたいなら』とは言ったけど、『行っていい』とは言ってないよ」

「…………」



 何それ!?


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