結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

「……もうお元気そうですし、執務室に戻りますか?」

「そうだね。でも、その前にまだやらなきゃいけないことがあるから」

「やらなきゃいけないこと?」

「うん。セアラともっと恋人らしいことをしなくちゃね」

「……はい?」


 ニコニコしながら私に近づいてきた殿下は、そっと優しく私の手を握り、その甲にキスを落とす。
 自然で美しい所作に見惚れている間に、次は頬にキスをされた。
 思わずビクッと肩を震わせてしまったけれど、殿下は止まることなく私の耳元や額にまでキスをしてくる。


「…………っ!」


 その唇が私の唇に触れそうになった瞬間、殿下の動きがピタッと止まった。


「……?」


 ギュッとつぶっていた目を開けてみると、至近距離で綺麗な黄金色の瞳と目が合う。
 まるで愛しいものでも見ているかのような優しい瞳が、何かを確認するように私を見ている気がして、私はもう一度目を閉じた。



 ……自分勝手なのか優しいのかわからないわね。



 すぐに唇が重ねられて、殿下の手が私の首筋に伸びてきた。
 殿下の手が熱いのか、私自身が熱いのか、頭がクラクラしてめまいがする。

 それでも離れたくなくて、私は殿下の服を掴んでそのまま彼に身を任せた。




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