結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
王子の秘書官をしている女性……ってどこか敬遠されるのかしら。
それとも、そんなことは関係なく私自身に魅力がなさすぎるから……?
思い返してみれば、女学園に通っていた私には恋愛経験というものがない。
「この年で初恋もまだって、どうなのかしら……」
そうポツリと呟いたとき、頭の片隅に1人の男の子が浮かんだ。
黒くて長い前髪で目を隠した、無愛想で口の悪い8歳くらいの少年──。
「あっ! そういえば、初恋は経験していたわ! ……6歳の頃の話だけど」
6歳の頃のたった一度の恋をカウントしていいのかわからないけれど、たしかに私はあの頃恋をしていた。
名前も知らないし顔もちゃんとは見たことのない、ほんの数回会っただけの男の子に。