結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
「あ、あの、殿下。本当にだいじょ──」
 
「セアラ」

 
 さっきより少しだけ低い声で名前を呼ばれ、笑顔のジョシュア殿下が私に近づく。
 そして私の耳元に口を寄せ、小さな声でボソッと呟いた。

 
「残さず食べろよ」
 
「…………はい」

 
 有無を言わさぬ圧のある声に、私はそう返事をすることしかできない。
 声の聞こえていないメイドたちは、単純に顔を近づけていた私たちを見てキャーーッと興奮した叫び声を上げていた。


 
 もう! この……腹黒王子が〜〜!!!
 殿下は、私がクア草が大嫌いだってよくご存知のはずなのに!


 
 私から離れたジョシュア殿下は、そのまま席に着き資料を確認し始めた。
 顔は満足そうにニコニコと笑っている。
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