結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
「……はじめまして。自分は……」
その男性が話し始めたとき、玄関の扉が開いた。
「あら? セアラ。もう着いていたのね」
「お母様」
顔を出した母が、玄関の少し先に立っていた私たちを見て目を丸くした。
私に声をかけつつ、男性にチラチラと視線を送っている。
知り合いなら挨拶をしているはずなので、おそらく母も知らない人なのだろう。
私の知り合い? とでも聞きたそうな顔を向けられて、思わず首をフルフルと横に振った。
私も知らないわ! この人、誰なの!?
お客様だと思って安心していたけれど、正体不明な男性が目の前にいるという事実に一気に不安に包まれる。
そんな戦慄した空気に気づいたのか、男性が私と母を交互に見た後にハッとして自分の髪を掴んだ。