嘘つき、桜月。

「……なんでもない」


 私の醜いところには気付いてほしくなくて、私は強がって見せた。


 その無理な笑顔は、余計に友哉を心配させてしまったわけだけど。


「……もしかして、嫉妬?」


 すると、友哉は弾む声で言った。


 なにが楽しいの。


 そんなに嬉しいの。


 私は、こんな感情を抱いていたくないのに。


「そんなに俺のこと好きだったとはね」
「……え?」


 待ってよ、なにをどうしたらそんな結論に至るの?


 私は混乱しているというのに、友哉は浮かれた様子で靴に履き替えている。


「ほら、たい焼き食べに」
「待って、私が友哉のこと好きとか、そんな、ありえないから」


 混乱ゆえに、私は余計なことを口走った。


 友哉は驚いた顔をしている。


 違う、こんなことを言いたかったわけじゃない。


 どうして私は、素直に言えないの……


 あの子みたいに、私だって友哉に気持ちを伝えたいのに……


「……ごめん、先に帰る」


 自分でも、泣きそうになっていることがわかった。


 友哉はきっと、ほっておいてくれない。


 だから私は、走ってその場から離れた。
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