嘘つき、桜月。

 新しいたい焼き屋に到着し、カスタードのたい焼きを購入する。


 温かくて、美味しそう。


「……そうだ」


 普段は食べ物を写真に収めるなんてことはしないけど、私は左手に持ったたい焼きの写真を撮った。


 少しだけもたつきながら、それを友哉に送る。


『は!?誘えよ!』


 友哉はすぐに返信してきた。


 ただの文字なのに、友哉の怒っている顔が想像できて、つい笑ってしまう。


『カスタードうま』


 そんな返信ができて私は気付いた。


 やっぱり、この距離感がいい。


 友哉のこと、好きかもしれないとか思っていたけど、少し特別な友達でいい。


 そして私はスマホをカバンに戻し、たい焼きを食べきった。


 次は桜だ。


 このあたりで綺麗な桜が見れるのは、やっぱり川沿いの桜道かな。


 最近のお気に入りの歌を口ずさみながら、次の目的地に向かう。


 なんて心地のいい春日和なんだろう。


 桜はまだ蕾だったけど、とても充実した時間になった。


 数時間前のもやもやした気持ちなんてとっくに消えていて、帰宅しても私はまだ浮かれていた。
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