嘘つき、桜月。
  ✿


『彼女できた』


 次の日、朝というには遅すぎる時間に目が覚めると、友哉からメッセージが届いていた。


 まだ寝たいなんて思っていたのに、一気に目が覚めた。


 ちょっと、待って……


 どういうこと?


 だって、友哉は、あの子の告白……


「……言ってない」


 友哉は、断ったなんて、一言も言ってない。


 私が勝手に決めつけて安心しただけ。


 どうしよう。


 友達よりも少し特別な、この関係でいるのが心地いいとか思ってたのに。


 いざ友哉に恋人ができると、一瞬で昨日までの黒い感情に染まった私に戻るなんて。


『既読無視かー?』


 混乱していたら、次のメッセージが届いた。


 待ってよ、まだ、一つも整理できてない……


 震える指先で、一文字ずつ打っていく。


 もう二年くらい使っているスマホなのに、人のものを使っているのかと錯覚してしまうくらい、ゆっくりだった。


『お』


 違う。


『め』


 思ってない。


『で』


 ねえ、信じないで。


『と』


 私の嘘に、気付いて。


 そっと、送信ボタンから手を離す。


 友哉から送られてきたのは、猫が舌を出して、煽ってくるようなスタンプ。


 ……なにこれ。


 戸惑っていると、電話がかかってきた。


 私は応答ボタンを押し、スマホを耳に当てる。
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