嘘つき、桜月。
「私、別に、友哉のこと」
「玲奈」
友哉に遮られて、私は自分が勢い任せに言ってはならないことを言おうとしていたことに気付いた。
今日はエイプリルフール。
でももう、嘘をついていい時間は、終わってる。
だから……
「……友哉の彼女になりたい」
素直に言えた安心感からか、涙が頬を伝った。
「ねえ、玲奈。好きだよ」
ここで“私も”と返せない私が嫌いだ。
だけどきっと、友哉には気付かれているんだろうな。
「玲奈、今日は俺とたい焼き食べに行こ」
「……うん」
❀
別に意地悪をしようと思って、一人で行ったわけじゃない。
でも、友哉と一緒に食べたたい焼きは、昨日よりもおいしく感じた。
そして、蕾だった桜は見事に咲き誇っていた。
私たちを祝ってくれている、なんて都合のいい解釈をしたくなってしまう。
「玲奈、こっち向いて」
桜に見惚れていると、友哉に呼ばれた。
振り向くと、シャッターの音がした。
「ちょっと、今の絶対可愛くないから撮り直して」
「いやいや、俺の彼女はいつでも可愛いんで」
友哉が幸せそうに言うから、それ以上言えなかった。
仕返しというわけではないけど、私も友哉にカメラを向ける。
私の彼氏だって、最高にかっこいいんだから。
「玲奈」
友哉に優しく呼ばれると、私は私を好きになれる。
差し出された手を握り、友哉のそばに立つ。
「……好きだよ」
小声だったのに、友哉には届いたみたいで、友哉は幸せそうに笑っていた。