【完結】先生、私と愛のために結婚して。


「残さずに食べてくださいね?」

「ああ」

 矢薙は昔から優しい子だったから、俺にもこんなに優しいんだろうなって思う。
 弁当を食べながら、俺は矢薙の顔を見つめていた。

「先生、そんなに見つめられると……恥ずかしいんだけど」

「あ、ああ……悪い」

 そんなつもりではなかったのだが……。

「もしかして先生、私のこと可愛いって思ってます?」

「えっ……!?」

 か、可愛い……? 
 いやまあ……確かに、キレイになったとは思う。大人っぽくなったし……。
 いや、でも……。もちろん、可愛いなとも思う。

「もしかして、図星?」

「……もちろん、可愛いと思うよ、矢薙は」

 俺はこんな風に年下の女に振り回されて……。なんか、情けないな俺……。

「ふふふ。嬉しい」

「矢薙は普通に、可愛いと思うけど」
 
「大好きな先生にそう言ってもらえるのが、一番嬉しい」

 ニコニコと微笑む矢薙の横顔は本当に嬉しそうで、俺みたいな男と一緒にいて、そんなに楽しいのか?とも思う。
 こんなおじさんと一緒にいて、何が楽しいのか……。

「……ねえ、先生?」

「ん?」

「私……先生に好きになってもらえるように、頑張るから。 だから先生、絶対に好きにさせるから、私のこと」

 俺みたいな男でも……人を好きになれるのだろうか。
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