【完結】先生、私と愛のために結婚して。
「俺が結婚しても泣くなよ、来栖」
「は?誰が泣くか」
そんな来栖だけど、来栖は誰よりも俺の幸せを願ってくれていることは分かる。
「俺さ……ずっと誰かに愛されることなんてないと思ってたよ、この先も」
「良かったなら、愛してくれる人がいて」
「……ああ、そうだな」
矢薙は俺を、こんなにも愛してくれる。そして矢薙は、俺とのデートの時は変に飾らず、ありのままの矢薙でいてくれる。
この間の三回目のデートの時は、「先生、手、繋いでもいい?」と恥ずかしそうに聞いてくれたのが、嬉しいと思えた。
俺の手を握った時には、すぐに「先生の手、温かくて大きいね」と笑ってくれた。
【あ、あのさ、矢薙……】
【はい?】
【その……恋人繋ぎ、する?】
俺のその言葉に嬉しそうに反応した矢薙は、「うん。恋人繋ぎがいい」と俺のその手を握り返した。
【先生と恋人繋ぎが出来るなんて、思ってなかったな。 なんで、してくれたの?】
なんでかと言われると、理由が特に見つからないのだが。
【俺、恋人繋ぎ……したことなかったからかな】
確かにこれは本当だ。恋人繋ぎをしたことは人生で一度もなくて、だから、経験してみたいと思ったのかもしれない。
でも【そっか。嬉しいな】と微笑む矢薙が、妙に可愛くも見えた。