【完結】先生、私と愛のために結婚して。
「俺、矢薙といると新鮮な気持ちになるんだよな」
「ん?」
ピリ辛のきゅうりの叩きをポリポリと箸を伸ばす来栖に、俺は「矢薙は、本当に一生懸命なんだよ。 俺に好かれたいのか、一生懸命いつも楽しませてくれるしさ」と話しながらビールを飲み干す。
「楽しいなって思えるような気がするよ。なんか」
こういうデートって、悪くないのかもしれない。
「お前……変わったな」
「はっ?」
「恋愛が苦手で臆病なくせに、強がってたお前が、あの子に結構心揺さぶられてるし」
確かに……。心が揺さぶられてるのは、確かかも。
「若い子の力ってすげえな」
テーブルに運ばれてきたつくねと焼き鳥を食べながら、来栖は「お前にはやっぱり、あの子がお似合いだな」と嬉しそうに笑う。
「俺は結婚して、あの子を幸せにしてやるべきだと思う。お前が」
「……そうか」
俺は矢薙に完全に心を持ってかれてるんだろう。このまま結婚するしか、道はなさそうだ。
「先に結婚するか、先に子供を作るか、どっちかだな」
「……なんでその二択なんだよ」
子供を作るという選択肢すら、今までなかったというのに。
「結婚なんて、俺にはする意味があるのかって思ってたけど……今ならなんか分かるよ。誰かと一緒に生きるのも、悪くないってさ」
これは俺にとって、人生の第二章だ。