【完結】先生、私と愛のために結婚して。


「冬崎先生……」

「ん? どうした、矢薙?」

 その二日後の夜、俺は矢薙と待ち合わせていたのだが、どうも矢薙の様子がおかしいのだ。

「矢薙?……どうした?」

 矢薙の顔を覗き込むと、矢薙の目が少しだけウルついていた。

「先生……私、先生に言ってないことが、あるの」

「言ってないこと……?」

「実は……ついこの間、両親から連絡があったの」

 連絡……?

「それで?」

「その、私を捨てた本当の母親って、人から……手紙が来たって、言われたの」 

「えっ……?」

 矢薙を捨てた、本当の母親から……?

「その手紙にね……私に会わせろって、書いてあったらしくて……」

「なに……?」

 会わせろって書いてあった……だと?

「で、その手紙が、何通も……届いてるんだって」

 まさか、今更そんなことになるなんて、普通は思わないよな……。

「それで、返事はしてるのか?」

「今更そんなことを言われても、会わせることは出来ませんって、返したらしいんだけど……。その母親曰く、私を捨ててないって言い張ってるらしいの」

「え? 捨ててない?」

 じゃあ、捨ててないなら、なんだって言うんだ?

「置いてただけだって、そう言い張ってるらしくて……」

「いや、それは捨てたとみなされても、確かにおかしくはないが……」
< 26 / 45 >

この作品をシェア

pagetop