【完結】先生、私と愛のために結婚して。
「冬崎先生……」
「ん? どうした、矢薙?」
その二日後の夜、俺は矢薙と待ち合わせていたのだが、どうも矢薙の様子がおかしいのだ。
「矢薙?……どうした?」
矢薙の顔を覗き込むと、矢薙の目が少しだけウルついていた。
「先生……私、先生に言ってないことが、あるの」
「言ってないこと……?」
「実は……ついこの間、両親から連絡があったの」
連絡……?
「それで?」
「その、私を捨てた本当の母親って、人から……手紙が来たって、言われたの」
「えっ……?」
矢薙を捨てた、本当の母親から……?
「その手紙にね……私に会わせろって、書いてあったらしくて……」
「なに……?」
会わせろって書いてあった……だと?
「で、その手紙が、何通も……届いてるんだって」
まさか、今更そんなことになるなんて、普通は思わないよな……。
「それで、返事はしてるのか?」
「今更そんなことを言われても、会わせることは出来ませんって、返したらしいんだけど……。その母親曰く、私を捨ててないって言い張ってるらしいの」
「え? 捨ててない?」
じゃあ、捨ててないなら、なんだって言うんだ?
「置いてただけだって、そう言い張ってるらしくて……」
「いや、それは捨てたとみなされても、確かにおかしくはないが……」