【完結】先生、私と愛のために結婚して。
今更、なんでそんなことを……?
「そしたら……両親が私を誘拐したって言い張ってるらしくて」
「誘拐……?」
いや、誘拐とは違うような気がするが……。
「誘拐して子供を育てたってことは、罪になるだろうから、訴えてやると言い出したらしくて……」
「訴える……?」
本当の母親の狙いはなんだ? なぜ今更、矢薙のことを狙うんだ?
「先生……。私……誘拐されたってことになるの?」
「……矢薙、大丈夫だ。そんなことはない」
俺は矢薙をそっと抱きしめる。矢薙の体は、少しばかり震えている。
「私の両親……訴えられちゃうのかな」
「そんなことにならないように、なんとかしよう」
今更産みの母親が矢薙に会わせろって言うということは……なにかきっと、理由があるはずだ。
「矢薙、その手紙……見せてもらうことは出来るか?」
「……あ、はい。家に行けばあります」
俺はそのまま、矢薙の家に連れていってもらうことになった。
矢薙の家に着くと、矢薙は家の玄関の鍵を開けて、俺を家を中へとと通す。
「どうぞ」
「お邪魔します」
女性の家に入るなんて、久しぶりで、なんだか緊張する。
「コーヒー入れるので、そこ座っててください」
「ありがとう」
さすが女性だ。きちんと整理されている。