【完結】先生、私と愛のために結婚して。
「先生、コーヒーブラック?」
「ブラックでいいよ」
「分かった」
マグカップを二つ持った矢薙が、俺の隣に座る。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
リビングの棚の引き出しから、手紙をいくつか取り出した矢薙は、それを俺に見せる。
「これだよ、例の手紙」
「……読んでもいいか?」
「うん」
俺はその手紙を開き、内容に目を通す。
その内容は、確かに矢薙が言っていたものと同じものであった。
「確かに……誘拐とか、訴えるとか、書いてるな」
「どうして私のことが、分かったの……かな」
「今は弁護士を使えば簡単に調べられる。 それに、SNSなどから情報を得ることも出来るからな。……その辺のものを使って、調べたんだろう」
「そんな……」
矢薙の表情は曇っていく。
「とにかく、俺も協力する。 俺にも何か出来ることがあれば、なんでもするよ」
「……ありがとう、先生」
矢薙が苦しんでる。……俺が助けてやらなきゃ。
「矢薙の両親が……何よりも一番辛いと思うし」
「私……産まれて来なきゃ良かったのかな」
「そんなことない。 産まれて来なきゃ良かったなんて思う必要は、全くない。 産まれてきて当然だったんだよ、お前は。……そんなこと、口にするものじゃない」
「……すみません」