【完結】先生、私と愛のために結婚して。


 その話が進展を迎えたのは、挨拶に行く前日の日だった。



「……先生」

「矢薙?どうした?」

 矢薙が俺に会いたいと電話してきたのは、金曜日の夕方だった。 仕事を終えた俺は、すぐに矢薙に会いに行った。

「あ、あの人が……」

「あの人……?」

 矢薙は震えた声で、俺に「あの人が……私に会いに来た」と言った。

「何……?本当か?」

 矢薙は静かに頷いた。

「それで? 何か言われたのか?」

 矢薙は震えた声で「お、お金を……せびられた」と俺に言ったのだった。

「お金……? まさか……渡したのか?」

 矢薙は首を横に振ると、「無理矢理……お金を奪い取ろうとしてたけど、運良く助けてくれた人がいて……それで、なんとか助かった」と話してくれた。

「……そうか」

 まさか……矢薙に会いに来た理由は、お金か?  

 矢薙が本当の娘だって知って、お金を求めるために会いに来たって……ことなのか?
 だとしたら……本当に狂っている。 

「ケガはないか? 大丈夫か?」

「うん……それは大丈夫」

「そうか。……怖かっただろ」

 矢薙をそっと抱き寄せると、矢薙は俺の胸に顔を埋める。

「あの人……借金があるって、私に言ったの」

「え……?」

「だから、お金が必要なの。お金頂戴って……私、そう言われたの」
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