【完結】先生、私と愛のために結婚して。
借金……。それで矢薙にお金をせびったのか。
借金を返すためなのか……それともーーー。
「おかしいよね……。今まで何もしてこなかったくせに、育ててもくれてないのに、娘が見つかったらお金せびるとかさ……。本当に笑えないね」
矢薙のそんな複雑で悲しそうな顔を見たのは、これが初めてだった。
「私のことなんて……見向きもしなかったくせに、お金欲しさに私に会いたいだなんて……腹立つ。私に会いたかった理由って、娘だからじゃなかったってことだよね……。私はあの人の金づるってことか」
矢薙のことを抱きしめることしか、今の俺には出来なくて……。それがまた悔しいと感じた。
俺は矢薙のこと、何も知らないんだなって感じて、虚しくもなった。
「このこと……お母さんに言うべきかな」
「言うべきだと思う。 絶対に、言わなきゃダメだ」
「……先生」
矢薙の幸せのために、絶対に言うべきだ。 矢薙がこの先苦しめられるのは、嫌なんだ。
もうすぐ妻になる矢薙が苦しんだり悲しんだりするのは、もう見たくない。
「矢薙……君の人生をこんなことで無駄にしちゃダメだ。君の両親だって、きっと同じことを思うはずだ。……だから絶対に、お金なんて渡したりしちゃダメだ」
「先生……」
「矢薙、俺がそばにいる。 だから、もっと俺を頼れ」