【完結】先生、私と愛のために結婚して。
矢薙の両親の複雑そうな表情が、未だに消えない。
「お母さん……私、あの人にお金渡した方がいいのかな」
その矢薙の言葉に、矢薙の母親は「何言ってるの! そんなこと、する必要なんてないわ。あなたのことを捨てた人に、お金なんて渡す必要なんてないわ。 あなたは幸せになるんだから、余計なことは考えなくていいのよ」と慰めていた。
「お母さん……」
「あなたには、冬崎さんがいるんでしょ? 冬崎さんと幸せになるのが、あなたの役目よ。……あなたは、何も考えずに幸せになって」
矢薙の母親の想いを聞いた俺は、思わず「俺が……咲音さんを必ず幸せにします。 必ず、守ります」と伝えてしまった。
「冬崎先生……咲音を、どうかよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
二人が頭を下げるから、俺は思わず「二人とも……顔を上げてください。 俺は……咲音さんの苦労を知っています。お二人が今日までずっと、どんな思いで咲音さんを育ててきたのか、俺には分かりません。……でも咲音さんは、お二人のことを本当の両親だと思っています。 お二人は、ちゃんと咲音さんの家族です」と伝えた。
「冬崎、先生……」
「俺が必ず、咲音さんを守ります。 だから、心配しないでください、お父さん、お母さん」
「……はい」