【完結】先生、私と愛のために結婚して。


「咲音……好きだよ」

「え?……っ!」

 咲音の身体を引き寄せて、ぐっと唇を寄せて咲音にキスをした。

「え……先生?」

「咲音、大好きだよ」

「……はい。私も……好きです。大大大好き!」

 咲音のことを抱きしめると、咲音の身体は細くてキュッとしていたけど、抱き心地が良い。

「先生……私、母親のことはもう忘れます」

「え?」

「確かに最低な母親です、あの人は。……だけどずっと、会いたかったことに変わりはないの。 でもね、あんな形になっちゃったけど、もう会えたから。私はそれだけで……もう満足」

 その言葉はきっと、咲音の思いの丈なんだろう。
 本当は、母親に抱きしめてほしかったに違いない。きっと「お母さん」と、呼びたかったのかもしれない。
 少しでも、産まれてきたことを感謝したかったのかもしれない。

 それでも咲音は、もう前を向いた。心も身体も、前を向いたんだな。

「咲音……産まれてきてくれて、ありがとう」

 咲音は「え……?」と俺を見つめる。

「咲音が産まれてこなかったら……俺は咲音と出会うことも、プロポーズされることも、結婚することもなかったから。 だから……産まれてきてくれて、本当にありがとう」

 その言葉を伝えると、咲音は涙を零した。 その涙は、本当にキレイな涙だった。
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