どうやら私、蓮くんに愛されているようです
理不尽
◇◇◇◇◇

「一体どういうことですかっ!」

商品企画広報フロア全体に、堅石恵那(かたいしえな)の声が響き渡る。

「まぁまぁ落ち着いて」

「これが落ち着いていられますか? お披露目はもう来週なんですよ! いきなり担当を外れろなんて納得できません!」

「はいはい、わかるよ。堅石くんはリーダーとしてみんなを引っ張って、素晴らしい商品を作り上げてくれた」

「だったら、何故ですか?」

「正直に言っていいものだろうか」

「は? なんですかそれ、言ってください」

「合わないんだよ」

課長の蚊の鳴くような声に恵那の苛立ちが募る。

「はい?」

「だからね、合わないのっ」

「合わない?」

「そういうところ」

「はぁっ?」

「怖いんだよ。若い女性がターゲット。しかも、春を感じさせるふんわりとしたイメージの商品だぞ。いかにもキャリアウーマンって感じの堅石くんとはかけ離れすぎているだろう。だから、大渕君とチェンジって上からの命令」

「なんですか⁉︎ それ!」

「もう役員会議で決まったの。決定事項」

「信じられない! 課長、それセクハラですよね? パワハラ?」

「じゃあ、訴えるかい? それでも構わんよ。私はまたこれから会議だ。この話は以上! 大渕君に引き継ぎをよろしく」

有無を言わせぬ課長の態度に、いや、上層部のやり方に、恵那は言葉を失った。

なんなのこの会社……
ホント腐ってしまったな……
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