どうやら私、蓮くんに愛されているようです
「ねぇ、よかったらこの絵、私に売ってくれない?」

「え? 」

恵那が微笑むと、男性の顔が紅潮した。

「そんな売るような絵じゃないから」

「どうして? 私にとっては凄く価値あるものだけど」

「あげるよ」

「ダメよ! これは貴方の大切な作品でしょ、無償なんてダメ」

「じゃ、じゃあ、あなたが決めて、いくらで買うか」

「んーーっ、それも難しいわね。どうしよう……」

恵那は視線を漂わせ考える。
ふと、男性の足元に置かれた大きな荷物が目に留まった。

「ねぇ、それ何?」

「寝袋」

「寝袋⁉︎ どうして寝袋なんて持ってるの? もしかして、家がないの? 仕事失っちゃった? 大変じゃない! なんてこと!」

「えっと……」

「野宿するつもりだったの?」

男性が突然肩を揺らし笑い始めた。

「俺の人生設定、酷くない?」

「え?」

「俺は家もあるし、職も失ってないし、野宿もしない。寝転がろうとは思ってたけど」

「そ、そうなんだ……早とちりしてごめんなさい」

「俺は柳楽蓮、仕事は…… んーーっ、何でも屋」

「私は堅石恵那、会社員」

「恵那ちゃん」

ちゃん⁉︎

突然のちゃん呼びに動揺する。

「な、何?」

「絵の対価、俺が決めていいかな?」

「ど、どうぞ」
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