どうやら私、蓮くんに愛されているようです
「わかった。引越し先見つかるまでうちに居ていいよ」

「えっ! 本当にいいの?」

「うん、絵の対価、でしよ?」

それから半年経った今も、蓮は居候生活を続けている。

何でも屋の朝は早く、夜はたまに遅い。恵那が目を覚ます前に出て行くこともある。遠方に駆り出されることもあり、数日留守にすることもある。

同居を始めた当初、リビングに寝袋を敷いて寝ていたが、身長もあり、寸足らずの寝袋で窮屈そうにしている姿が不憫で、恵那のベッドで一緒に寝るようになった。

キングサイズなので密着することもない。ただ、寝相の悪い恵那の手足が蓮を攻撃してしまうことだけは、心から申し訳なく思っている。

それでも蓮は「恵那ちゃんの寝相は豪快だもんね」そう笑って許してくれるのだ。

蓮はとにかく優しい。恵那の全てを包み込んでくれる。蓮と一緒にいると心地よい。

蓮の恵那に対する感情が、どんなものなのかはわからない。家族なのか、友達なのか、やはりただの同居人なのか……

一緒に出かけたこともなく、同じベッドで寝ていても、一度も性の対象として見られたことはない。だからきっと、蓮にとって恋愛対象ではないのだろう。
それを知ってしまうのが怖くて、今の生活が壊れてしまうのが怖くて、蓮を失ってしまうのが怖くて、自分の気持ちに鍵をかけている。
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