どうやら私、蓮くんに愛されているようです
蓮は知っている。新商品発売に向けて、恵那がどれだけの情熱を持って企画立ち上げから今までやってきたのかを。もちろん、情報漏洩にあたるため、企画の内容は話していない。

「降ろされちゃった」

「え⁉︎ 何で⁉︎」

「合わないんだって」

「合わない?」

「私、今回の商品のイメージに会わないんだって。怖いんだって」

「はっ⁉︎ 何だよそれ!」

「役員会議で決まったんだって。部長が頑張ってくれたみたいだけど、ダメだったみたい」

「部長さんって、恵那ちゃんが尊敬してる人?」

「うん……」

「役員連中は最低だね。そんな連中の下で恵那ちゃんが働いているなんて心配だよ」

「私は大丈夫だよ。部長がいてくれるから」

「でも、もしさ、もしもだよ、部長さんがいなくなったらどうするの?」

「え?」

「部長さん、そんなクソ役員連中の中で埋もれるような人じゃないんでしょ?」

「うん」

「もしかしたら、スカウトされるかもしれないじゃない?」

「そっか……そうだよね」

「恵那ちゃんは? もし、スカウトされたらどうする?」

「そんなことあるわけないよ。私がされるわけないもん」

「わかんないでしょ! もしかしたら、恵那ちゃんの能力を凄く買ってくれてる人がいるかもしれないじゃない!」

「もしそうだとしたら凄く嬉しいけど、でも、私は転職しない」

「どうして?」

「だって、社長が目を覚まして戻ってきた時、必死に作り上げてきたものが全て無くなってたら悲しいじゃない。私だけでも、笑顔でおかえりなさいって言いたい」

「恵那ちゃん……」

恵那は笑ってみせた。笑ってみせたが、それは果てしなくぎこちない笑顔だった。
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