どうやら私、蓮くんに愛されているようです
ふらふらと自宅に戻り、玄関ドアを開けると、部屋中は静まり返っていた。

蓮くんいないんだ……

深い溜息をつき、鉛のような体をソファーに預けた。
何をする気にもなれない。
陽が落ち、暗くなった部屋に明かりを灯すことすらできなかった。

「ただいま……恵那ちゃん、帰ってるの?」

蓮の温かい声がする。

恵那は玄関に向かって駆け出し、縋るように蓮に抱きついた。

「恵那ちゃん?」

「私、もうダメみたい……何もできなかった……もう笑顔でおかえりなさいって言えない」

蓮の胸に顔を埋めて泣いた。

蓮に泣いている姿を見せるのは初めてだ。同居を始めた時から、涙を見せてはいけない。なんとなくそう思っていた。重い女だと思われたくなかったのかもしれない。
酔っ払ったり、おっさんなのような言動は散々繰り返しているが、涙を流すことだけはすまいと心に決めていた。
もうそんな余裕もない。

蓮は恵那の背中を摩りながら、涙がとまるまでずっと抱きしめていた。
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