どうやら私、蓮くんに愛されているようです
「部長っ!!」

「お久しぶりね、堅石さん」

目の前にいるのは、紛れもなく浅田美奈子だ。

「驚いた?」

恵那は驚きのあまり声を発することを忘れ、何度も頷いている。

「引き抜かれた会社って……」

「そう、RYUSHOホールディングス、ここよ」

「そう、だったん、ですね……」

「堅石さん、改めまして、ルクススペイ株式会社、専務取締役、浅田美奈子です。よろしくね」

「え⁉︎ 専務取締役⁉︎」

「ええ、そうよ。上層部からルクススペイを託されたの。まぁ、とりあえず座りましょうか」

「はい……」

二人は向かい合うように腰掛けた。

「まさか部長が……」

「私は私のやり方で会社を守りたいって思ったの。これ以上、あいつらに月島社長が大切にしてきたものを壊されたくなかったから」

「だからあの時、為すべきことを為すために行くって……」

「ええ」

「部長は凄いですね。私は何もできませんでした」

項垂れる恵那の手を、美奈子がそっと握る。

「そんなことないわよ。あなたの頑張りはちゃんとわかってる。私だって、自分一人の力じゃどうにもできなかった」

顔を上げると、美奈子は柔らかい笑みを浮かべていた。

「堅石さん」

そして、恵那の目を見据えた。

「はい」

「あなたにお願いしたいことがあります」

「何でしょうか?」

「商品開発部の部長をやって欲しいの」

「はいそうですか、部長ですか…… えっ⁉︎ ⁉︎ ⁉︎」

「あなたが適任だと思うの。やってくれるわよね?」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください! わ、私が部長ですか⁉︎」

「ええ」

「本当に私ですか⁉︎」

「もちろん」

「私に務まるでしょうか……」

「務まると思ったから、お願いしているのよ」

「はぁ……」

「あなたなら大丈夫」

「はい……」

「決まりね。近々正式に辞令が出るからよろしくたのむわよ!」

その時、会議室のドアがノックされ、美奈子が返事をすると、ダークグレーのスリーピーススーツを着こなした長身の男性が姿を見せた。

「統括部長、お疲れさまです」

男性の顔を見た瞬間、恵那はこれでもかと言わんばかりに目を見開いた。
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