どうやら私、蓮くんに愛されているようです
がむしゃらに仕事をこなし、日々を過ごした。
柳楽家の人間として恥ずかしくないよう、使えない奴だと笑われないよう、常にストイックであることを心がけた。結果、会社では、社交的な直敬とは反し、厳しく、近寄り難い存在だと周知されてしまっている。
まあ、あながち間違いではない。
仕事は順調だ。なのに、ふと虚無感に襲われることがある。
いつのまにか、どこかに大切なものを置き忘れてしまったのではないかと、不安に駆られることが多くなった。
蓮は無意識のうちにスマホを取り出し、登録された番号にメールを送った。
『元気ですか?』
母、薫子に送った初めてのメールだった。
送信をタップした直後、我に返り削除しようとしたが、すぐに返事が送られてきた。
言葉はなく、ただ画像が添付されているだけだ。
夕焼けに染まる街並み
その写真を見た瞬間、心の中がじわりと温まっていく感覚を覚えた。
そして再度メールが届く。
《 今日の夕焼けはとってもあたたかい色をしているわ》
蓮の目に涙が滲んだ。
息子から初めて連絡をもらい、その内容が『元気ですか?』たった一言。
それに対して『あなたは元気?』とか、『自分は元気だ 』とか、『何かあったの?』とか、当たり障りのない内容ではなく、蓮の気持ちを察して送ってきたのであろう写真と言葉に、救われたような気がした。
『綺麗だね。いつか俺も見に行くから場所教えて』
それから薫子とは数回顔を合わせた。その度に、額の傷については何度も謝られた。
腕の良い医者に治療してもらい、傷もあまり目立たないから大丈夫だと言っても、薫子はいつまでも自分を責めているようだった。
「あまりくどいようなら、もう会うのをやめるよ」
強めの口調できつい言い方だったが、以降、傷のことは口に出さなくなった。会う時間は限られている。お互い貴重な時間だ。それなのに、会話は他愛無いものだった。その平凡なやり取りは、蓮と薫子にとって、とてもかけがえのない時間だった。
柳楽家の人間として恥ずかしくないよう、使えない奴だと笑われないよう、常にストイックであることを心がけた。結果、会社では、社交的な直敬とは反し、厳しく、近寄り難い存在だと周知されてしまっている。
まあ、あながち間違いではない。
仕事は順調だ。なのに、ふと虚無感に襲われることがある。
いつのまにか、どこかに大切なものを置き忘れてしまったのではないかと、不安に駆られることが多くなった。
蓮は無意識のうちにスマホを取り出し、登録された番号にメールを送った。
『元気ですか?』
母、薫子に送った初めてのメールだった。
送信をタップした直後、我に返り削除しようとしたが、すぐに返事が送られてきた。
言葉はなく、ただ画像が添付されているだけだ。
夕焼けに染まる街並み
その写真を見た瞬間、心の中がじわりと温まっていく感覚を覚えた。
そして再度メールが届く。
《 今日の夕焼けはとってもあたたかい色をしているわ》
蓮の目に涙が滲んだ。
息子から初めて連絡をもらい、その内容が『元気ですか?』たった一言。
それに対して『あなたは元気?』とか、『自分は元気だ 』とか、『何かあったの?』とか、当たり障りのない内容ではなく、蓮の気持ちを察して送ってきたのであろう写真と言葉に、救われたような気がした。
『綺麗だね。いつか俺も見に行くから場所教えて』
それから薫子とは数回顔を合わせた。その度に、額の傷については何度も謝られた。
腕の良い医者に治療してもらい、傷もあまり目立たないから大丈夫だと言っても、薫子はいつまでも自分を責めているようだった。
「あまりくどいようなら、もう会うのをやめるよ」
強めの口調できつい言い方だったが、以降、傷のことは口に出さなくなった。会う時間は限られている。お互い貴重な時間だ。それなのに、会話は他愛無いものだった。その平凡なやり取りは、蓮と薫子にとって、とてもかけがえのない時間だった。