どうやら私、蓮くんに愛されているようです
家を見つけるまでという名目で居候生活を始めた。
蓮が RYUSHOホールディングスの人間だということを恵那は知らない。

常に柳楽家の長男という鎧をまとって生きてきた蓮が、恵那の前では重い鎧を取り払い、唯一素のままでいられる。
会社でのイメージとはかけ離れすぎていて自分でも驚いてしまったほどだ。

一緒に住み始めた翌朝、恵那が朝食を作ってくれた。トーストに目玉焼き。だが、トーストはまる焦げ。目玉焼きは半熟なのに白身の下の部分はカチカチ。強火で一気に焼いことは一目瞭然だ。圧倒的な料理下手だということが発覚した。
それでも、自分のために作ってくれたその気持ちがとても嬉しかった。だが、毎日食べされられては体がもたない。必然に蓮が料理担当となった。

料理下手な恵那だが、掃除をやらせればプロ並みで、どこもかしこもピカピカに磨き上げる。
スッキリ片付いた部屋でビールを飲むのが楽しみらしい。
いつもコンビニのつまみですませているのだと聞き、簡単なものを作ってやれば、感動して泣いていた。
行きつけの居酒屋で出されるごぼう揚げが好物らしいが、店の味と比べられるのが癪なので、あえて作らないでいる。

そんな恵那の中にはおっさんが住み着いていて、それは酔っ払った時に姿を現す。
そのおっさんは甘えん坊で、異次元に可愛らしく、世話を焼いてしまいたくなるほど愛おしい。
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