どうやら私、蓮くんに愛されているようです
「化粧品会社を持っていらっしゃらないからです」

「そうですね、確かに競業ではありません」

「それに、新規で会社を立ち上げるとなると、莫大な時間とコストがかかります。でしたら、既存の会社を収めてしまった方が良いのではないかと考えた次第です。というのは建前で……」

「どうしました?」

「傘下に収めたあとも、ルクススペイの社名はそのままに、企業理念も変えずにいただきたいと思っています。無謀で、大変失礼なことを言っているのは重々承知しています。それでも、弊社を元の姿に戻し、経営を立て直していくには御社の力が必要なんです。どうか、力をお貸しください。よろしくお願いします!」

「本当に、貴女は、自分の立場がどうなってしまっても構わないというのですね?」

「はい。罵られようが、後ろ指を指されようが、業界から干されようが、私の意思は揺らぐことはありません」

「わかりました。協議して、ご連絡させていただきます」

「ルクススペイをどうぞよろしくお願いいたします」

美奈子は深く頭を下げ、会議室を後にした。


恵那ちゃん、君の上司は凄いね。俺も負けてられないな。

美奈子の後ろ姿を見送りながら、そんなことを思っていた。
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