どうやら私、蓮くんに愛されているようです
面談は、蓮を含む男女3名の役員と、社員となった美奈子の4名が担当する。

面談当日を迎え、美奈子は変装し、後方の椅子に待機している。彼らが真実を語っているのか否か確認するために美奈子を同席させているのだが、美奈子を目にした場合、本音を語らない可能性もある。それは避けなければならない。結果、取った策が変装だ。
ショートカットの美奈子はロングヘアのウィッグをつけ、黒縁の眼鏡をかけた姿は、全くの別人のようだった。

美奈子を引き抜く際、買収に向け既に動いていることや、全てが片付くまで引き抜かれたことは内密にするよう話をした。
蓮は初めから、この状況を想定していたのだ。

いよいよ面談が始まり、残すはあと一人となった。
これまで話をしてきた管理職の面々は、一人を除き、これといって問題はなさそうだった。
問題の一人は、商品の路線変更を打ち出し、売上を著しく減少させた男性部長だ。
美奈子の退職後、後任に就いた人物だったようだ。
彼の降格は間違いないだろう。
そして最後の一人を迎え入れる。

「商品企画広報課、課長を務めております大渕紗夜子と申します。よろしくお願いいたします」

これまでで一番若い管理職だ。同時に、恵那の言っていたことが脳裏に浮かんだ。初めて恵那が涙を見せた日、苦しい胸の内を話してくれた。
企画から携わり、大切に作り上げた新商品を送り出す直前に担当を外され、同い年の社員と交代させられた挙句、美奈子が去ったことで、その社員が恵那の上司になったのだと。

彼女か……

蓮は心の中で呟いた。

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