どうやら私、蓮くんに愛されているようです
「どうぞ、おかけになってください」

蓮が座るよう促し紗夜子が腰掛けると、女性役員が口火を切った。

「あなたにとって化粧品とはどういうものですか?」

「自分自身をを美しくさせ、前向きな気持ちに導いてくれるものです」

優雅に堂々と話す紗夜子。

「なるほど、わかりました」

次に蓮が紗夜子の目を見据え、口を開く。

「統括部長の柳楽です。大渕さん、直近のあなた自身の業績についてお話し願いますか?」

「はい、今春発売いたしましたアイメイク商品ですが、企画から携わらせていただきました。お披露目時には過去最高の予約数を記録し、現在も多くの方々に購入していただいております」

「そうですか、それは素晴らしいですね」

「ありがとうございます」

「課長に昇進されたのは最近のようですが、その業績が認められての昇進ということでしょうか?」

「私もはっきりとは存じませんが、そうなのではないかと思います」

蓮は視線を美奈子に移した。
視線に気づいた美奈子が大きくかぶりを振る。
それを見た蓮は続けた。

「大渕さん、それは本当にあなたの業績ですか?」

「えっ?」

それまで優雅に構えていた紗夜子の表情が微妙に歪んだ。

「もう一度訊きます。それはあなたの業績ですか?」

「それは……」

黙り込む紗夜子に向かい、蓮はさらに続けた。

「では、確認させていただきます」

「えっ、確認?」

「大渕さんの言っていることは正しいですか? 浅田さん」
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