どうやら私、蓮くんに愛されているようです
全員の視線が会議室後方に注がれ、紗夜子自身も振り返った。

美奈子は立ち上がり、

「事実ではありません」

強く言い放った。

美奈子がウィッグを取り、紗夜子のもとへ歩み寄る。

「ぶ、部長! ど、どうしてここに」

「大渕さん、嘘はいけないわ」

「嘘だと?」

役員がざわつき始めた。

「その商品は、堅石さんがリーダーとなって、一から作り上げたものよね? あなたはお披露目を担当しただけじゃなかったかしら」

「いったいどういうことだね、大渕君」

「君はその堅石さんの業績を自分の手柄にしようとしたのかね?」

「私たちを騙そうとするとはどういう神経をしているの?」

「管理職の風上にもおけないな」

「人としても最低な行為だぞ!」

膝の上で握りしめた紗夜子の拳が震えている。

もう十分だろう。

「大渕さん、面談はこれで終了です。処遇は追って連絡します」

紗夜子はふらふらと立ち上がり、会議室を出て行った。

「彼女のような社員を受け入れることは、我が社にとって不利益になるとしか思えん!」

「本当にその通りですわ!」

興奮気味の役員を落ち着かせるように、蓮は穏やかに口を開いた。

「そうですね。ですが、少し様子を見てみるのもいかがかと」

「様子を見たところで降格処分は免れんだろう」

「確かにそうですわね」

「統括部長、賢明な判断をよろしく頼んだよ」

「承知いたしました。お疲れ様でした」

紗夜子の面談を最後に回して良かった。

役員たちは呆れた表情を浮かべ、会議室をあとにした。

「統括部長、私も失礼させていただきます」

「浅田さん、ありがとう。お疲れ様でした」

「いいえ、私は自分が為すべきことを為したまでです。失礼いたします」

美奈子が出て行くのを見届けた蓮は、会議用椅子に腰を下ろし、大きく息を吐いた。

ルクススペイ、必ず俺が守ってみせる。

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