どうやら私、蓮くんに愛されているようです
「蓮くん」

「ん?」

「どんな思いで私と暮らしてたの? ルクススペイの情報を聞き出すため?」

「違うっ! そんなわけないだろう。俺、会社のことについて何か訊いたことある?」

恵那はかぶりを振った。

「俺は、恵那ちゃんと一緒にいたかったから、部屋を見つけても出ていかなかったんだ。恵那ちゃんとの生活を壊したくなかったから、何も言えなかった。ホントごめん」

「蓮くん…… 私も、蓮くんとの生活壊したくなかった」

蓮は恵那を抱きしめた。抱きしめられた恵那は、身体中にまとわりついていたあらゆる負の感情が、剥がれて落ちていくのを感じた。
抱きしめられた蓮の温もりに、全てが癒されていく。
恵那は、蓮の背中に回した腕にギュッと力を込めた。

「ンッンッンッ!」

美奈子が咳払いする。

ハッとした恵那は蓮から離れようとしたが、蓮は解放してくれなかった。

「お取り込み中のところ大変申し訳ありませんが、一応ここは会社です。誰が見ているかわかりませんよ。といいますか、統括部長、そんな優しい顔するんですね。いつも感情を表に出されないので少し驚きました」

「ん? 俺はこんなだよ。恵那ちゃん限定だけど」

「はいはい、それはたった今、この目で確認いたしました。続きはお帰りになられてからにしてください」

「浅田さんは厳しいね」

「厳しいとかそういう問題ではないと思いますが」

「わかったよ」

蓮がそっと恵那を解き放つ。

「恵那ちゃん、いや、堅石恵那さん、商品開発部の部長、引き受けてくれますか?」

恵那が美奈子に目配せすると、美奈子は深く頷いた。

「お引き受けいたします」

力強く答えた。
< 46 / 53 >

この作品をシェア

pagetop