どうやら私、蓮くんに愛されているようです
数日後、管理職の処遇が正式に決まり、恵那の上司だった男は係長に降格。紗夜子も課長職から恵那の部下となった。
処遇を言い渡された後、紗夜子はしばらく出社していたが、先日退職願いを提出した。

恵那は人事部からの伝言を伝えるため、デスク周辺の片付けをしていた紗夜子のもとへ向かう。

「書類のことで話があるそうだから、後で人事部に顔を出してほしいそうよ」

無言で作業を続ける紗夜子に、それ以上話しかけることはせず、席へ戻ろうと踵を返した。

「笑いなさいよ」

「え?」

「バカな女だって笑えばいいじゃない。ざまぁないって思ってるんでしょ?」

「笑えるわけないでしょ!それに、ざまぁなんて思ってないわよ!」

「アンタいったいなんなのよ」

「え?」

「選ばれるのはいっつもアンタ。私が欲しいものをアンタはいとも簡単に手に入れていった。私が好きだった人も、アンタのことが好きだった。サッカー部の先輩から告白されたでしょ? 卒論だってそう。仕事だってそう。アンタは全部を手に入れていった。私は何もしてません、みたいな涼しい顔して!」

「ちょっと待って! 私はサッカー部の先輩から告白されたこともないし、卒論だって私が考えていた研究をあなたが卒論のテーマとして提出したわよね。仕事だって大手に採用されたじゃない。なのにどうしてそうなるの?」

紗夜子は呆れたようにフンッと鼻を鳴らした。
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