どうやら私、蓮くんに愛されているようです
全身全霊を会社に捧げる思いで頑張って貢献したい。その気持ちを一番理解してくれていたのは、会社を一から作り上げた薫子だった。
薫子が会社を立ち上げた当初は、良い商品を流通させるだけの小さな会社だった。それを地道な努力で、企画、生産、販売、流通と、全工程を自社で行えるまでに成長させ、大勢の消費者に認知してもらえるほどになった。薫子が全身全霊を注ぎ大切にしてきたルクススペイ。独り身の薫子にとって家族同然の存在だ。
恵那の情熱に、自分と通ずるものを感じた薫子が、恵那を採用したのだと、入社後、薫子から聞かされた。
恵那は薫子の想いに応えるべく、企画から販売まで、一つの商品ができるまで、全ての過程において携わることのできるこの職場で、誠心誠意、全力で仕事をしてきた。
結果、インフルエンサーと言われる多くの人たちから発信してもらえるほどの商品を送り出すことができている。
そして、今春に発売予定の新商品がようやく完成し、お披露目の時が間近に迫っていた。この商品はゆるふわ感を演出するアイシャドウで、恵那がリーダーとなり、企画からチーム一丸となって作り上げてきたのだ。
それなのに……
恵那は握った拳を力強く握りめた。
「堅石さん」
サイドから紗夜子の声がする。
周囲に気づかれないよう呼吸を整えると、貼り付けた笑顔で紗夜子の顔を見た。
「引き継ぎをするわ」
「せっかく頑張ってきたのに、私もここへきての交代は本意じゃないのよ。でも、上からの命令じゃ仕方ないわよね」
紗夜子の胸の内が手に取るようにわかる。
気遣わしげな表情の裏では、きっとほくそ笑んでいるに違いない。
恵那は「そうね」とだけ告げ、淡々と引き継ぎを行った。
担当から外れ、恵那の肩から全てが離れていく。定時で上がれるほど身が軽い。
これみよがしに忙しそうにフロアーを動き回る紗夜子を一瞥し、恵那は会社のエントランスを抜けた。
薫子が会社を立ち上げた当初は、良い商品を流通させるだけの小さな会社だった。それを地道な努力で、企画、生産、販売、流通と、全工程を自社で行えるまでに成長させ、大勢の消費者に認知してもらえるほどになった。薫子が全身全霊を注ぎ大切にしてきたルクススペイ。独り身の薫子にとって家族同然の存在だ。
恵那の情熱に、自分と通ずるものを感じた薫子が、恵那を採用したのだと、入社後、薫子から聞かされた。
恵那は薫子の想いに応えるべく、企画から販売まで、一つの商品ができるまで、全ての過程において携わることのできるこの職場で、誠心誠意、全力で仕事をしてきた。
結果、インフルエンサーと言われる多くの人たちから発信してもらえるほどの商品を送り出すことができている。
そして、今春に発売予定の新商品がようやく完成し、お披露目の時が間近に迫っていた。この商品はゆるふわ感を演出するアイシャドウで、恵那がリーダーとなり、企画からチーム一丸となって作り上げてきたのだ。
それなのに……
恵那は握った拳を力強く握りめた。
「堅石さん」
サイドから紗夜子の声がする。
周囲に気づかれないよう呼吸を整えると、貼り付けた笑顔で紗夜子の顔を見た。
「引き継ぎをするわ」
「せっかく頑張ってきたのに、私もここへきての交代は本意じゃないのよ。でも、上からの命令じゃ仕方ないわよね」
紗夜子の胸の内が手に取るようにわかる。
気遣わしげな表情の裏では、きっとほくそ笑んでいるに違いない。
恵那は「そうね」とだけ告げ、淡々と引き継ぎを行った。
担当から外れ、恵那の肩から全てが離れていく。定時で上がれるほど身が軽い。
これみよがしに忙しそうにフロアーを動き回る紗夜子を一瞥し、恵那は会社のエントランスを抜けた。