どうやら私、蓮くんに愛されているようです
「堅石さん!」
突然背後から呼ばれ、恵那は振り返る。
「部長!」
浅田美奈子が息を切らし恵那の前で立ち止まった。
美奈子は執行役員で、経営企画部の部長を兼任している。
「力不足でごめんなさい」
「えっ! どうして部長が謝るんですか?」
「最後まであなたに全うしてもらいたかったんだけど、私の力ではどうにもできなかった」
あぁ、そうか。あの役員たちの中、一人で立ち向かってくれたんだ……
美奈子は薫子の右腕だった。どんな時も薫子を支え、会社を盛り立ててきた。そして恵那のことも、厳しいけれどいつも目にかけてくれる、恵那が最も尊敬する上司だ。
薫子が倒れ、皆が新社長の機嫌をとる中、美奈子だけは自分の意思を変えることはせず、ただ会社のことだけを考え行動してきた。だから、今回もきっと、たった一人で戦ったのだ。
上に美奈子がいてくれる。そう思えるからこそ、恵那自身も意志を強く持ち、仕事をすることができている。
「ありがとうございます。部長がいてくださるから私は頑張れます」
「堅石さん……」
「部長、私、めげずに頑張りますから」
恵那はガッツポーズをしてみせた。
「それではお先に失礼します」
感謝の意を込め深く頭を下げた。そして踵を返し足を踏み出す。
「最後まで側にいてあげられなくて……ごめんね」
ぽつりとこぼした美奈子の声は、恵那の耳には届いていなかった。
突然背後から呼ばれ、恵那は振り返る。
「部長!」
浅田美奈子が息を切らし恵那の前で立ち止まった。
美奈子は執行役員で、経営企画部の部長を兼任している。
「力不足でごめんなさい」
「えっ! どうして部長が謝るんですか?」
「最後まであなたに全うしてもらいたかったんだけど、私の力ではどうにもできなかった」
あぁ、そうか。あの役員たちの中、一人で立ち向かってくれたんだ……
美奈子は薫子の右腕だった。どんな時も薫子を支え、会社を盛り立ててきた。そして恵那のことも、厳しいけれどいつも目にかけてくれる、恵那が最も尊敬する上司だ。
薫子が倒れ、皆が新社長の機嫌をとる中、美奈子だけは自分の意思を変えることはせず、ただ会社のことだけを考え行動してきた。だから、今回もきっと、たった一人で戦ったのだ。
上に美奈子がいてくれる。そう思えるからこそ、恵那自身も意志を強く持ち、仕事をすることができている。
「ありがとうございます。部長がいてくださるから私は頑張れます」
「堅石さん……」
「部長、私、めげずに頑張りますから」
恵那はガッツポーズをしてみせた。
「それではお先に失礼します」
感謝の意を込め深く頭を下げた。そして踵を返し足を踏み出す。
「最後まで側にいてあげられなくて……ごめんね」
ぽつりとこぼした美奈子の声は、恵那の耳には届いていなかった。