心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ずっと自分だけで呼んできた名前……人に呼んでもらえるだけでこんなに嬉しいのかと、マリアは驚いた。
……元々あまり感情が顔に出るタイプではないので、マリアの喜びに少年は全く気づいていないが。
「……俺はグレイだ」
「…………」
少年は自分の名前を教えてくれた。
しかし、マリアはなんと呼んでいいのかわからずに黙ってしまう。
マリアが名前を呼ばれないのと同じで、マリアも誰かの名前を呼ぶことがなかったからだ。
グレイ……じゃダメだよね。
グレイ様? グレイ卿? グレイ……嬢?
今までに訪れた貴族がなんと呼ばれていたか、マリアは思い出していた。
しかし正解がわからない。