心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 伝説の聖女が俺の妹というのも悪くない。



「いいか。俺のことはお兄様と呼ぶんだ。言ってみろ」

「お兄様……?」


 マリアにそう呼ばれたグレイは、なんとも言えない不思議な高揚感に包まれた。
 

「そうだ。これからはそう呼べ。特別に許可してやる」


 マリアはコクリと頷く。


「あ。だが、このことは誰にも話すな。わかったな?」


 マリアはコクリと頷く。

 13歳のグレイと7歳のマリアが、この日初めて兄と妹の関係になった。
 
 この時にマリアを妹としてしまったこと、「お兄様」と呼ばせるようにしてしまったことを後悔する日がくるとは、13歳のグレイには知る由もなかった。
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