心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「それ、聖女の本でしょ? 誰に似てないの?」
「…………」
グレイは無言のまま本を棚に戻した。
「えーーなんで戻すの? というか、なんで無視? ひどくない? 泣いちゃうよ? ねぇねぇ」
「うるさい」
レオはこの学園で唯一、グレイに物怖じせず話しかけてくる人物である。
実は2人は幼馴染で、小さい頃からの知り合いだ。
グレイの性格が変わり、みんなが距離を置くようになってからも、レオだけはそれまでと同じ態度でずっと接してくれている。
「お前、なんでここにいるんだ?」
「グレイが図書館のほうに向かってるのが見えたから、後をつけてきた! それより、グレイこそなんで聖女の本なんか見てるの?」