心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「なんで……? どうしてそんなにこの子を……」
「聖女だからだ」
「…………は?」
「マリアは聖女だ」
「な……何言って……」
「マリア、こっちに来い」
わけがわからないといった顔をしているレオを無視して、グレイはマリアを呼んだ。
トコトコと格子の近くまでやってきたマリアの顔に手を伸ばし、真っ黒の眼帯を外す。
薄暗い部屋の中で、黄金の輝きを持つ美しい瞳があらわになった。
「!!!」
レオがマリアに目を奪われている。
身動きもせず、口を大きく開けたままただ真っ直ぐにマリアを見つめている。
マリアも、最初こそグレイを見てきたが、今では自分をずっと見つめてくるレオを見つめ返している。
「マリア。そいつの左足を治せ」