心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 レオの瞳には涙が浮かんでいる。
 その後も、レオは走ったり飛び跳ねたり、部屋の中をバタバタと動き回っては、自分の怪我が完全に治ったことを確認した。


「夢みたいだ……!! 本当にこの怪我が治るなんて……」


 レオは格子の間に手を入れてマリアの手をつかむと、両手でぎゅっと握りしめた。
 目からはすでに涙がこぼれ落ちている。


「ありがとう!! 本当にありがとう!!」


 お礼を言われたマリアは、少しだけ動揺を見せた。

 今まで目の前で腕を切りつけようが、寝ているところを突然起こそうが、全く動揺していなかったマリアが……初めて目をパチパチさせて、少し困ったような顔をしている。

 気のせいか、真っ白な頬が少しだけ赤くなったように見える。

 なぜだかグレイはそんなマリアの様子が気に入らなかった。
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