心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
 グレイは子どもをジロジロと見つめているうちに、ある違和感を抱いた。
 子どもは起きているのに、グレイに対して何の反応もしてこない。

 眼帯をつけていて見えないとはいえ、物音で誰かいることには気づいているはずだ。
 実際に子どもは座ったままグレイのいるほうを向いている。

 驚いている様子も、怯えている様子もない。
 黙ったままグレイの方向に顔を向け、何かを言われるのをただ待っているようだった。


 なぜ泣かない? 助けを乞わない?
 誰かがいるとわかっているからこそ、見えない恐怖があるのではないか?


 その子どもはとにかく髪が長く、座っている状態だと髪が床についてしまっている。

 薄暗い部屋でもわかるほどの美しいプラチナブロンドの髪は、毛先のみ緩やかなウェーブになっていて、真っ白な肌と合わせるとまるで人形のようであった。
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