心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「なんで聖女なのにこんな檻に閉じ込めているんだ!? すぐに王宮に連絡して、保護してもらうべきだ」

「そんなことをしたら、俺の家は終わるな。俺の母も俺も使用人も……聖女を隠して監禁した罪で捕まるし、最悪処刑される」

「そ、それは……」


 グレイの言葉に、優しそうな顔をした少年は一気に弱気になった。
 そう言えば優しい少年ならきっと(ひる)む……と、わかっていたのだろう。

 そしてその言葉に怯んだのは、マリアも同じであった。



 マリアがここから出たら、お兄様がつかまっちゃう?
 しょけい……ってなんだろう?



「で、でも、この檻からは出してあげたいよ。せめて眼帯や鎖を外したり……」


 少年は檻の格子につかまり、不憫そうな顔でマリアを見ている。
 マリアに対して『哀』の感情を向けてくれた人は、グレイに続いて2人目だ。
< 121 / 765 >

この作品をシェア

pagetop