心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「マリアは(ここ)から出たいのか?」


 グレイがマリアに尋ねた。
 少年が「当たり前だろ!」と言っているが、グレイはそれを無視している。



 (ここ)から出たい……?
 


 マリアは考えた。
 出たいといえば出たい。やわらかいベッドで寝たり、部屋の中でのんびり過ごしたい。でも……


「マリアが(ここ)から出たら、お兄様がつかまっちゃう?」

「!」

「しゃ……しゃべった!」


 驚いて目を丸くしている少年に比べれば、まだまだ無表情だろう。
 それでも、グレイも驚いているのが表情から伝わってくる。

 じーーっと見つめるマリアからの視線を、グレイはキリッと整った顔で真っ直ぐに見つめ返した。
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