心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
機嫌が悪くても鍵がない日の場合は、檻がマリアの身体を守ってくれる。
その代わり暴言を吐き続けられるわけだが、叩かれるよりはずっといい。
マリアにとって、檻から出ることは怖くもあるのだ。
「……お前がこの家から逃げないなら、檻から出せるように動いてやってもいいぞ」
グレイの提案に、マリアは首をフルフルと振った。
「……それは、この家から逃げたいということか? 檻から出たくないということか?」
「…………」
マリアはどう答えていいのかわからなかった。
今まで、自分の意見を聞かれたことなんてなかったから、どこまで本当の気持ちを言っていいのかわからない。