心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイは見下ろすような状態から、膝をついてマリアと同じ目線に合わせてきた。


「正直に言え」


 その口調は命令形だったが、マリアにはなぜかそれが優しさに感じた。



 言ってもいいのかな……?



「外はこわいから、逃げない。外は……わからない」

「じゃあなぜ檻から出たくないんだ?」

「……こ……こわいから」

「怖い? …………イザベラか?」


 マリアはコクリと頷いた。
 グレイは苦虫を噛み潰したような顔で「チッ」と舌打ちをした。


「あいつ、おかしいからな」

「お前も大概だけどな〜」


 少年がはははっと笑いながらそう言うと、グレイは無言のまま少年のお尻をドスッと蹴った。
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