心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「おお……! こんな小さい子から名前で呼ばれるっていうのも、仲良しのお兄ちゃんみたいでいいな!」
「お前、結局なんでもいいんじゃねーか…………あっ」
ハッとしたグレイは、すぐに持ってきていた時計を確認した。
そして舌打ちをすると、マリアに話しかけているレオに声をかけた。
「もうこんな時間だ。あの女が帰ってくる前に、この屋敷の鍵を部屋に戻さないと……」
「えっ! じゃあ早く帰らないと!」
「行くぞ。またな、マリア」
そう言うと、グレイはマリアにまた黒い大きな眼帯をつけて、部屋の扉に向かって歩き出す。
レオはマリアの頭をポンポンと軽く撫でて、にこっと笑った。
「じゃあね、マリア。必ずここから出してあげるからね」
「早くしろ」
「はいはい」
マリアは何も言わずに2人の背中を見送っていた。