心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
 小さな口も細い身体も、動く気配がない。
 これは本当に生きた人間なのだろうか、とグレイが疑うほどだ。


「……お前は誰だ?」


 グレイは子どもに問いかけた。
 だが子どもは何も答えない。突然声をかけられたというのに、驚いた様子も戸惑っている様子もない。


「お前は誰にここに連れて来られたのだ?」


 子どもは何も答えない。


「いつからここにいる? ここで何をしている?」


 子どもは何も答えない。


「この檻から出ることはあるのか?」


 子どもがコクリ……と頷いた。

 初めて反応が返ってきたことに、グレイは驚いた。
 この子どもは喋らないが、答えられる質問であれば反応が返ってくる。

 そうとわかったグレイは、質問の内容をよく考えてから言葉にした。
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