心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「ここには毎日人が来るのか?」


 子どもはコクリと頷く。


「それは女か?」


 子どもはコクリと頷く。


「それはイザベラという名前か?」


 子どもはコクリと頷く。


「他には誰が来るんだ?」


 子どもは何も反応しない。
 勢いに任せて答えられない質問をしてしまった。
 失敗したと思ったグレイは、聞き方を変えた。


「イザベラ以外の人間もここに来るのか?」


 子どもはコクリと頷く。

 グレイ自身気づいてはいないが、彼はこのやりとりを楽しんでいた。
 子どもが反応をするかしないかゲーム。

 子どもが反応したらグレイの勝ち、反応しなかったら負け。
 そんな遊びなど、ジュード卿が愛人を連れてきた日から一度もやったことがなかったし、やりたいとも思わなかった。

 そのため、グレイは今自分がゲーム感覚で楽しんでいることに気づいていない。
 ただ気分が高揚している……それだけは実感していた。
 質問している内容には大して興味はなく、ただ子どもが反応するかを楽しんでいる。
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