心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「マリア……その、実際に何をされたのか話せるか?」


 マリアは大きな瞳でじーっとグレイを見つめている。


「こんなことをされたとか、言われたとか、そういうのを教えてほしい」

「……叩かれた」


 そうか。

 ポソっと呟いたマリアに、グレイはついそう答えそうになった。それではこの『会話』が終わってしまうと、その言葉を喉元で止める。

 レオが相手の場合、自分が会話を止めてしまってもまたすぐにレオが話し出すから、深く考えたことがなかった。
 だが相手がマリアとなれば別だ。グレイが会話を止めてしまったら、そのまま終わってしまう。

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