心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 言ってもいいのかな?



「……叩かれた」


 少し勇気を出して言ってみた。
 マリアはこんなことを言って怒られはしないだろうかと不安だったが、グレイは難しい顔をして話を続けた。


「……どこをどんな風に叩かれたんだ?」

「えっと、足とか、手とか、背中とか……バシンって」


 グレイは黙っている。
 もっと言ったほうがいいのだろうか、とマリアは続けて話した。


「あとは……爪でガリって……」

「……引っ掻かれたということか?」


 マリアは頷いた。
 被害を受けているのは実は主に顔なのだが、それは言わなかった。


「あー……その、叩かれた傷とかは平気なのか?」

「治してるから平気……」


 そう答えると、また2人の間に静寂が訪れた。
 グレイも戸惑っているのが伝わってくる。
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